低侵襲除圧術による固定隣接椎間の再発治療

腰椎固定術の4年後に上下固定隣接椎間に再発した70代女性

背景

71歳の女性患者は、約4年前にL4/5すべり症と脊柱管狭窄症が原因で間欠性跛行と両下肢のしびれを訴え、除圧固定術を受けました。術後、左下肢の末梢にしびれが残ったものの、間欠性跛行は改善し、日常生活に支障なく過ごしていました。

症状の経過

しかし、4年後から新たに腰痛、両側の臀部痛、大腿外側の痛みが出現しました。痛みは立位保持と歩行で増強し、坐位で軽減する傾向があり、仰臥位でも痛みが増すようになりました。患者は痛みを抱えながらも、なんとか歩行ができる状態で外来を受診しました。

検査結果

神経学的検査では、左側に強い両側のL5神経根とL4神経根領域に触覚と痛覚の異常が認められ、左長拇指伸筋の筋力低下と左でラセグー徴候が陽性でした。画像検査の結果、L4/5の椎体間ケージ+ペディクルスクリューによる固定は適切に行われており、隣接椎間には滑りは認めませんでした。しかし、固定隣接椎間のL3/4に馬尾神経を圧迫する脊柱管狭窄があり、両側L5/S1に椎間孔狭窄が疑われました。

最終的に、L3/4の脊柱管狭窄症によるL4神経根および馬尾症候、さらに両側L5/S1の椎間孔狭窄症によるL5神経根症と判断しました。

手術

症状の進行性や神経障害を考慮し、手術適応と判断しました。固定隣接椎間であるものの、滑りや不安定性は認めなかったため、MD法による神経除圧術を選択しました。手術は腹臥位で行い、L3/4の正中およびL5/S1の両側に2cmの皮膚切開を加え、MD法で両側L4神経根と硬膜管、両側L5神経根の除圧術を行いました。術後の総出血量は15ml以下でした。

術後の経過

術後は、翌日から離床とリハビリを開始し、7日間で自宅退院を果たしました。術前の腰痛、臀部痛、下肢痛は消失し、立位保持や歩行にも支障がなくなり、仰臥位を保つことができるようになりました。術後、左足のしびれと感覚障害は今のところ残っているものの、全体的には症状が改善しました。

まとめ

本例は、固定隣接椎間の再発で上位椎間と下位椎間に狭窄症が生じ、神経拘扼が原因で症状が出現したケースです。スクリューの影響により画像診断が困難になることもありますが、症状と神経学的検査、そしてレントゲン撮影、CT、MRIを基に総合的に診断を行うことが重要であり、私はこの総合診断法の向上に努めてきました。

腰椎固定術は隣接椎間での再発があるため、再発症状の責任椎間と病変を明らかにし、適切な治療法、手術法を選択することが求められます。今回のように、固定隣接椎間の再発であっても、MD法により低侵襲で症状の改善が可能であることを強調したいと思います。再固定術が必ずしも必要でないということをご理解いただければ幸いです。


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低侵襲除圧術による固定隣接椎間の再発治療” に対して14件のコメントがあります。

  1. T.T. より:

    佐藤先生 ありがとうございます。

    承知しました。詳細を書いたものを同封させていただきます。
    よろしくお願いいたします。

  2. T.T. より:

    佐藤先生
    今日、・・・・病院の整形外科を受診しました。
    レントゲンとMRIを撮りました。CTは不要とのご判断でした。

    脊椎はきれいで、特に問題はないと言うことでした。(ヘルニアや脊柱管狭窄、すべり症はなし)
    診断は「両下肢末梢神経炎のうたがいで、約1ヶ月の休業を要する見込み」でした。
    事務仕事などであれば、職場と相談して、やっても良いそうです。

    薬や湿布は気休めだとのことでしたが、
    一応出していただき、今日の昼から服用しています。痛みが消えれば止めて良いとのことでした。

    ①メコバラミン錠500「トーワ」0.5mg
    ②ノイロトロビン錠4単位
    ③ロキソプロフェンNa錠60mg「武田テバ」
    ④レバミピド錠100mg「オーツカ」
    ⑤ケトプロフェンテープ40mg「パテル」

    レントゲンとMRIのCDコピーを明日、24日に発送させていただきます。
    どうぞよろしくお願いいたします。

    1. T.T.さんへ

       画像検査では、脊椎はすべりがなく、その他の問題も見られず、きれいとの判断をいただき、まずは一安心ですね。しかし、ちょっと気になるのは、T.T.さんが最初のコメントに書いてあった症状で「両足の下肢外側や足の指先にしびれ」があるという部分です。それでCDコピーを送る時に一緒に両下肢の痛みとしびれを色分けするなど(例えば、痛みは赤色、しびれは青色など)わかりやすい方法で図示したものを同封してくれますか。この図が診断に大変重要になりますのでお願いしますね。それと症状を具体的に書いてください。どんな症状がどんな時に強くなるかなどです。例えば座ったり横になっていると腰痛は軽いが、立ったり、歩いていると強くなるなどです。
      それでは、札幌美しが丘脳神経外科病院の私宛にCD等を送ってください。私が見るのは30日水曜になりますので、それから結果を報告しますね。
      それではお大事に。

      from SHUJI SATO

  3. T.T. より:

    佐藤先生、今日、町の外科医院を受診し、・・・病院の整形外科への紹介状を書いていただきました。
    少し前に思い出したのですが、4年ほど前に、少ししびれが出たときに、一度受診しました。
    ドクターは、レントゲンで確認され、「もし手術するなら、最初の先生にしてもらうのが良い。私はしない。」とおっしゃっていました。
    しびれはその後消えました。
    そのドクターに、4月23日(水)に受診できることになりました。

    それから、しびれがでる前、カーブスのような、高齢者向けの筋トレとステップボードのトレーニング(1時間程度)を、週2回(木金)続けていましたが、しびれのある今も、続けて良いでしょうか。筋肉が落ちないために。
    今は、しびれと腰にあたりの違和感があります。

    1. T.T.さんへ

      それでは4月23日の診察結果を教えてください。また、画像コピーは札幌美しが丘脳神経外科病院の私宛に郵送してください。
      カーブスという運動の詳細を知りませんので、それについてアドバイスすることはできませんが、一般的には腰椎由来の神経症状、つまり下肢の痛みやしびれなどが安定しない状態にある時期には、腰を前後屈したり回旋する運動は避けた方が良いと思います。足腰の筋力低下を防止するには、ウオーキングを無理ない速度で無理のない時間、距離で行うことをお勧めします。腰の病気の本体がまだ不明な段階ですので運動も慎重になさってください。
      それではお大事に。

      from SHUJI SATO

  4. T.T. より:

    佐藤先生、感謝いたします。
    医療機関の結果が分かりましたら、報告させていただきたいと思います。

  5. T.T. より:

    佐藤先生、お返事ありがとうございます。
    前屈みにならない姿勢で、しびれは軽くなっています。でも、就寝時もしびれがあり、そちらに意識がいってしまって、なかなか寝付けません。
    腰ベルトは、効果は、特別感じられず、締め付けて息苦しい感じがあります。ですので、はずしていることが多いです。
    まずは、地元で整形外科を受診してみます。この先、もし手術が必要となれば、私は佐藤先生にしていただきたいという願いがあります。
     
    詳しいアドバイスをくださり、感謝いたします。

    1. T.T.さんへ
       まずは整形外科を受診してMRI検査を受けてもらうことが第一歩ですね。その時に腰椎レントゲン撮影ですべり症がないか、もし、すべり症がある場合には腰を前に曲げた姿勢(屈曲位)と腰を反らした姿勢(伸展位)で撮影を行うと、すべり症のある部位で不安定な腰椎の動きが起こるか(これを専門的には不安定性と言います)を知ることができ、手術の際に固定術が必要か否かの判断に役立ちます。脊椎専門医はルーチンで腰椎4方向とか6方向という撮影条件ですべりや不安定性の有無も検討します。
      病院によっては、一度の受診で必要なすべての検査を行いますが、MRIは予約検査になることが多いようです。このあたりのことは病院によって異なりますのでご注意ください。
      もし、手術が必要であれば喜んで執刀させていただきますよ。金沢脳神経外科病院時代もそうでしたが、現在も全国から患者さんが手術を受けにこられています。初回手術も再発手術もすべてMD法でやることが患者さんに受け入れられているようです。
      それでは検査結果が届くのを待ちましょう。

      from SHUJI SATO

  6. T.T. より:

    佐藤先生、ご回答ありがとうございます。
    まとめて質問せずに、ごめんなさい。
    3つ質問があります。

    ①MRIは、脊髄の4-5の輪切りだけで良いのでしょうか?2-3,3-4もでしょうか?
    また、CTとレントゲンは、立位を、後方からと、右側からと、左側から撮影するのですか?

    ②現在、保育園の厨房の皿洗いは、シンクのかさ上げをして、前屈みにならないで出来るようにしています。1日4時間勤務で、1時間ぐらいの食器洗いと、あとは片付けの仕事です。腰ベルトをしています。それは続けてもいいでしょうか。それとも仕事を辞めて(休んで)安静にしていた方が良いでしょうか。

    ③両下肢外側と親指付近にしびれがあり、腰の中が痛い様に感じ不安定です。整形外科を受診して、痛み止めを服用すべきでしょうか。
     痛みが消えてしまったら、病気の進行状況が把握しにくくなるのではないかと思うのですが、いかかでしょうか?

    脊柱管狭窄症の再発かもしれないとのことで、少し動揺しております。申し訳ありません。

    1. T.T.さんへ
      質問に回答します。
      1.検査に関しては、受診した病院での診療の一環として行われるものです。従って、どんな検査をどんな条件で行うかは病院の判断で行われます。患者側としては、MRIを実施して欲しい旨、病院側に希望を伝えることはできると思います。
      2.シンクのかさを挙げて前屈みにならないようにしたそうですが、一般的には椎間板ヘルニアには良いですが、脊柱管狭窄症では逆効果になることがあります。実際に楽になったかどうかで判断することになります。一般的に腰ベルトは腰痛に効果ありますが、その逆の場合がありますので、効果あるなら続けてください。まず、薬を服用して仕事が継続できるかを判断してください。服薬しても仕事で腰痛や下肢のしびれなどが悪化する場合には仕事を休むことを考えたら良いでしょう。まだ今回の原因と治療法が決まらない段階ですので仕事を辞めることまで考えなくても良いと思いますよ。
      3.整形外科を受診して、鎮痛剤を処方されたなら、それを服用することです。消炎鎮痛剤の効果がどの程度あるかを知ることは、その後の治療を判断するのに参考になりますからね。

      最後に注意して欲しいことあります。病院は町の写真屋さんと違いますので、MRIを取って欲しい、CTを取って欲しいと言っても通用しないということです。あくまでも腰痛や下肢のしびれに対して担当医の判断で検査が組まれ、診断がなされ、治療が行われるということです。
      以上参考になれば幸いです。

      from SHUJI SATO

  7. T.T. より:

    佐藤先生、ご回答ありがとうございます。
    画像コピーとは、紙面にコピーしたものでよろしいのでしょうか?
    それともCDコピーでしょうか?

    1. T.T.さんへ
       
      CDコピーが良いですね。医療機関にお願いすると有料になりますが、CDにコピーしてくれますよ。その方が情報量が多いのでより正確な診断ができます。
      ご検討ください。

      from SHUJI SATO

  8. T.T. より:

    佐藤先生 ご無沙汰したおります。
    私は、2017年4月に、金澤脳神経外科病院で、脊柱管狭窄症の手術を受けました。
    沖縄在住の現在65才になった女性です。
    手術後、神経の痛みも徐々に消えていき、運動もできる様になり、トレーニングやスイミングもしておりました。
     ところが、今年3月、保育園の厨房で、食器洗いの仕事を一ヶ月続けたところ、月末になって、両足の下肢外側や足の指先にしびれが出現しました。脊椎管狭窄症の時は、左足のしびれでした。
    今回は、深いシンクで腰を頻繁に曲げていたため、後ろ側にヘルニアが出て、両足にしびれがでているのではないかと思っております。
    先生の著書では、しびれが消えるまでに約3ヶ月、それ以上にしびれが続く場合は、手術を考えた方が良いとのことです。
    沖縄で、MD法の病院を探しています。(今回は北海道までは行けないと思います。)
    もし、佐藤先生がご存じの病院や医師がおられましたら、教えていただくことは可能でしょうか?
    YIセンターは、顕微鏡手術をしているそうですが、MD法なのかわかりません。

    1. T.T.さんへ
      お久しぶりです。手元の手術記録をみました。この時期は若い先生が主治医で助手になり、手術は私がすべて執刀していました。確かにL4/5の脊柱管狭窄症でMD法により両側のL5神経根・馬尾神経の除圧術を行っていますね。さて、今回の症状は何が原因なのか、まずそれを診断することが必要です。その原因によって治療法なり手術法が違ってきますからね。推測するに、現在の症状からは、過去に手術したL4/5の脊柱管狭窄症の再発が最も疑われます。もしかするとすべり症を伴っているかもしれません。脊柱管狭窄症再発やすべり症を伴う脊柱管狭窄症再発の手術の場合、一般的にはMD法は適応とされません。多くは除圧固定術が行われることになります。ただし、脊柱管狭窄症の再発でも、すべり症を伴っていても、私は大多数の患者さんで再度MD法による手術を行っています。おそらく、沖縄では再発やすべりを伴う脊柱管狭窄症に対してMD法を行う医師はいないと思います。なぜなら以前に沖縄でMD法を行う医師を探したが見つからず、私のところで手術を受けられた患者さんがいたからです。
      とは言え遠方ですので、まず地元で腰椎のレントゲン、CT、MRIなどで検討してもらい、それらの画像コピーを札幌美しが丘脳神経外科病院の私宛におくっていただけるなら検討してさしあげますよ。ご検討ください。
      それではお大事に。
      from Shuji Sato

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